東京・両国国技館東京・両国国技館

 綱とりに挑んだ3月の春場所から一転、6度目の大関かど番の窮地に立たされた貴景勝。

 早くも2日目に力なく敗れたが、黒星を引きずることはなかった。

 迷いなくぶつかって前進。翠富士を正面に置き、気迫十分に押し出した。「自分には闘争心しかない」との信条を貫いた内容に、師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)は「(今場所で)一番いい相撲だった」。過去3戦全勝だった小兵相手とはいえ、前日までとは違い、思い切りの良さが光った。

 先場所は左膝を痛めて無念の途中休場。春巡業は全休し、部屋を離れて母校の埼玉栄高にも出向いて黙々と調整した。場所前から報道陣に多くを語らないが、それは決死の覚悟の表れだろう。

 2日目からは両膝にテーピングを施し、この日も土俵から下りる際には苦悶(くもん)の表情を見せた。万全とは言えない状態の中、逆境に立ち向かう姿に、八角理事長(元横綱北勝海)は「いい立ち合いができれば、いい流れになる。毎日の積み重ねで変わってくる」。この白星を好転へのきっかけにしたいところだ。 

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